研究テーマ

主に動物を用いた学習心理学的視点と比較心理学的視点に立った研究を行っています。 

学習心理学では「経験による行動の変化」を研究するために伝統的に動物モデルを用いてきました。この分野では,「人間の行動変容の原理とメカニズム」が最終的な目標になります。しかし,人間に対して実験的に与えることのできる経験や環境のコントロールには限界があります。例えば,幼少期に経験した強い恐怖の影響,解決できない問題に持続的に曝される影響,得ることのできる収入全体に対する個別の報酬の効果,経験による性的嗜好性の変容,等を人間を対象として効率的に研究することはきわめて困難です。このため,基本的な学習原理において人間と多くを共有するネズミやトリやサルを用いた研究が行われています。

比較心理学的なテーマとしては,様々な動物の認知過程を調べることを目指しています。特に,外界から取り入れた情報に対して彼らがどのような心的表象を形成して操作できるのかということに関心があります。我々人間は,具体的には全く異なる事物に対して「同じ」,「異なる」,「大きい」といった事物の具体的な相違にはとらわれない抽象的な表象を形成して操作することが可能です。動物もこのような心の世界を持っているのだろうか?どのような動物がどのような心を持つのだろうか?この問いの検討を通じて,彼らの心的世界を,さらにはそのような比較の枠組みが与えられることによって人間の心の特徴と,それが進化の過程でいかにして生まれたのかが明らかになると考えています。



進行中の具体的研究課題
ラットにおける計数,異同概念の学習
性条件づけによる性的嗜好性の変容(ラット)
ラットにおける推移的推論
ラット・マウスの系列学習
キンギョ・カメのワーキングメモリ
ブタの学習と行動(石川県立大学・上野糧正助教との共同研究)